2014年11月14日
省エネ技術解説1;蒸留プロセスの設計について
省エネ技術解説シリーズの初回は、学生時代の演習で行ったエタノールの蒸留プロセスの設計を取り上げ、計算方法を解説したいと思います。
本題に入る前にまず、使う式について紹介します。
エネルギー収支式 ΣHin+Q=ΣHout+W
ここで、Hはエンタルピーといい、単位はkWで簡単に言うと流体の全エネルギーのことです。
エネルギー収支式は処理装置に流入する各流体のエンタルピーの合計ΣHinに所要の加熱量(熱流)Qを加えると流出する各流体のエンタルピーの合計ΣHoutと外部に取り出される仕事(動力)Wになるということです。
例えば、ある処理装置で流体1、2を加熱し流体3、4にしたい場合(目的とする物質に変換するのみなのでを取り出す仕事Wはこの場合0)
H1+H2+Q=H3+H4
となり、必要加熱量Qは
Q=H3+H4-(H1+H2)
と求められます。
今回の蒸留プロセスも例のように物質を加熱し分離するだけで仕事を取り出すわけではないのでエネルギー収支式は
ΣHin+Q=ΣHout
となります。
エンタルピーは流体の質量流量(単位;kg/s)をmとすると、H=mhと表せます。
ここで、hを比エンタルピーといい、単位質量あたりのエンタルピーのことで単位はkJ/kgです。
ちなみに、J/s=Wです。
また、液体の比エンタルピーはhl=cptと表せます。
ここで、cpは流体の定圧比熱(単位;kJ/(kg・℃))
tは摂氏温度(単位;℃)です。
蒸気の比エンタルピーはhv=hl+λとなります。
ここで、hlは沸点の液(飽和液という)の比エンタルピー、λは蒸発潜熱といい、単位はkJ/kgです。ちなみに、lはliquid(液体)、vはvapor(蒸気)を意味しています。
以上の式を使って、蒸留プロセスの必要蒸気量と冷却用の工業用水量を算出することができます。
次回、実際の計算について解説していきたいと思います。