2018年06月30日

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エンタルピーとは
先ず、静止している物質のエネルギーのやり取りについて考えます。物質は気体でも液体でも構いません。物質はある内部エネルギーを有しています。内部エネルギーについて簡単に説明します。まず、液体や気体を構成する分子は様々な方向に飛んだり振動したりしています。そうした運動する分子は運動エネルギーなどのエネルギーを有しています。物質とはそうした分子の集まりです。そして、そのように分子がある量集まって物質を構成するとき、その個々の運動エネルギーなどの合計を内部エネルギーと言います。液体や気体といった物質が容器に入っているとします。容器内の物質に何らかの形でに熱を加えると通常膨張します。そして、一般的に内部エネルギーの変化を伴います。これを式で表すと
 U1+Q=U2+W
と表します。これは、Q、Wを正の値とすると内部エネルギーU1の状態の物質に熱Qを加えると仕事Wが取り出されるという意味です。
ここで熱と仕事の違いを簡単に説明します。先ず、仕事について説明したほうが分かりやすいかもしれません。仕事とはある目に見える変化が観測されるエネルギーの移動と考えることができます。目に見える変化が起こる時、物質を構成する分子は集団で何らかの方向に作用しています。膨張はシリンダーに入っている気体がピストンを押すこととして観測されますが、これは様々な方向に飛行し衝突する各分子がピストンに衝突するとき、その分子が、例えば斜め方向からピストンの壁に衝突しても、ピストンの壁と垂直な方向にも力を及ぼします。たくさんの分子が同じように様々な方向からピストンに衝突し、垂直方向にも力が作用しています。すると、分子一つでは動かないピストンも分子の集団によって動くことになります。このとき、分子の集団は、その一つ一つは様々な方向に飛んで衝突しながらも、ピストンが移動する方向に規則的な作用を及ぼしていることになります。この規則的な作用の結果、分子の集団によるエネルギーの移動が目に見える形で観測される現象として現れます。このときこれを気体がピストンに仕事をしたといいます。例えば、ピストンのように一方向でなくても風船が膨らむ場合でも同じで、風船の中で様々な方向に飛び交う気体の分子の集まりが放射状の向きに規則的な作用をした結果、目に見える”膨らむ”という現象として観測されるのです。このとき、気体は風船の表面積を引きのばす仕事と風船の外の空気などを押しのける仕事という二つの目に見える変化を引き起こしたことになります。
纏めると、仕事というエネルギーの移動は分子の規則的な作用によって何らかの変化が起こることによるということです。
一方、熱とは目に見えない形でのエネルギーの移動の現象です。
ここまで、静止している物質について考えてきました。では、流れている物質、つまり流体から取り出せるエネルギーはどう考えるかについてです。静止している液体や気体などの物質の場合、容器に入っている状態から考えました。流体の場合容器に入る時と出る時を新たに考慮します。先ず、流体のエネルギーは単位時間当たりのエネルギーとして考えます。流体が単位時間に入ってくる体積、そして出ていく体積を体積流量と言います。それともう一つ重要なのが、流体の圧力と流体の体積流量の掛け算は単位時間当りの流体がその圧力でその体積分押し出す仕事だということです。単位時間に流れる流体はそれを構成する分子が集団で流れる方向に移動していて、その方向に対して押出すという規則的な作用があるのでそうした仕事をする能力があるということになります。配管から容器の中に流体が流れ込む時、容器内に何か仕事を取り出す装置、例えば、羽車といったものがあればそこに流体が作用し仕事が得られます。流れている以上、容器から出ていかなければなりません。出るときは容器から押し出されるわけで、流体は容器から仕事をされ、そのエネルギーをもらって出ていくことになります。すると、正味では入ってきたときと出ていったときの仕事をする能力の差に相当する仕事が得られます。言いかえると流体の流入時の仕事をする能力は流出時の仕事をする能力と流体に由来する仕事の合計に等しいということです。
そして、流体が配管から容器に入った後は、静止している気体や液体と同様、容器内で熱を加えられるなどして、容器内空間で膨張し、何らかの形で羽車等に規則的な作用、つまり、仕事をします。このとき、流体の内部エネルギーが一般的に変化します。
このように、容器に流入し流出するときと容器内で膨張するときの規則的な作用の合計としての仕事が、流体の容器通過で得られると考えられます。言いかえると、流体の容器への流入時の内部エネルギー、圧力×体積流量に熱を加えると、流出時の内部エネルギー、圧力×体積流量と仕事が取り出されるということです。これを式で表すと、
U1+P1v1+Q=u2+P2v2+W
と表されます。さて、やっとここでエンタルピーHの出番です。エンタルピーHは
H=U+PV
と定義されている概念です。従って、上式は、
H1+Q=H2+W
と表されます。
  

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2018年05月01日

省エネ改善提案No.3外気取入れ量の適正化

今回の省エネ提案事例は改善提案No.3外気取入れ量の適正化です。
提案概要は下表のようになります。





今回も空調設備に関する省エネです。空調設備には室内の空気を一定の温度、湿度に維持するとともに空気の衛生面も求められます。そこで空調設備は循環する空気の一部に外気を取り入れて混合し、室内に供給することを行っています。しかし外気取入れ量が多いと外気の熱負荷で省エネの面では宜しくありません。従って、空気の衛生面と省エネのバランスを考慮して、適正な外気取入れ量の削減を行う必要があります。今回の提案はそうしたバランスを考慮した省エネ提案です。ポイントは室内と外気のCO2濃度です。

以上を踏まえて、改善提案No.3外気取入れ量の適正化について内容を提示します。

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提案3 外気取入れ量の適正化
ガス吸収式冷温水機で消費する都市ガスの削減量は空調での外気負荷削減量に比例します。
そこで、月別外気データ、空気環境測定結果、湿り空気線図より以下の表を作成しました。





tCO;外気平均気温、φa;外気平均湿度、hCO;外気エンタルピ,Xa;外気CO2濃度、⊿h=|hCO-hCR|
tCR;室内平均気温,φr;室内平均湿度、hCR;室内エンタルピ、Xr;室内CO2濃度、⊿h’=⊿h×(1-全熱交換器効率)

・試算条件;
室内平均気温、湿度、CO2 濃度;冷房期間(中間期)は5 月、同(夏期)は8 月、暖房期間は2 月の空気環境測定結果の各観測地点の平均

全熱交換器効率;0.55、室内外エンタルピ;各温湿度データより空気線図で割り出す。

外気削減率;(Xr'-Xr)/(Xr'-Xa)、Xr';室内CO2濃度目標値900ppm

現状外気取入れ量;24000 ㎥/h、外気削減量;24000 ㎥/h×(Xr'-Xr)/(Xr'-Xa)

外気負荷削減量;外気削減量×1.2×⊿h'、1.2;空気の密度[kg/㎥]

月間外気負荷削減量;外気負荷削減量×160h/月÷1000、160h/月=8h/日×20 日/月

期間外気負荷削減量;各期間の月間外気負荷削減量の合計

期間都市ガス削減量;期間外気負荷削減量÷実効COP÷41.66、実効COP;COP×劣化率

COP;冷房時1.2、暖房時0.9、劣化率;0.65、41.66;都市ガス低位発熱量[MJ/㎥]

・試算;
年間都市ガス削減量;期間都市ガス削減量の合計=778+590+4,852=6,220 ㎥/年
低減コスト;6,220 ㎥/年×76.5 円/㎥=476 千円/年
原油換算;6,220 ㎥/年×0.045GJ/㎥×0.0258kL/GJ=7.2kL/年
CO2削減量;6,220 ㎥/年×0.045GJ/㎥×0.0136t-C/GJ×44/12t-CO2/t-C=14.0t-CO2/年
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次回、計算式の考え方等について解説します。  

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2018年03月31日

空調設備の診断

。今回  

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2018年02月28日

省エネ改善提案No.2冷却水温度の適正化

今回も、省エネ提案事例の紹介です。
 改善提案No.2冷却水温度の適正化について取り上げます。これは空調設備の省エネです。
 先ず結論としては、下表のようになります。




 今回取り上げるガス吸収式冷温水機の冷却水入口温度についてですが、これは低いほどいいということです。冷却水は冷温水機が冷却を行う際に排出する熱を取り去るのに使われます。冷却水の温度は排熱時の温度より低くないと、当然冷却水に熱が流れません。
 一方、排熱時の温度は、冷温水機の負荷に関係しています。これは、冷温水機負荷が冷却温度と排熱温度の差に比例しているということです。簡単に言うと、温度差が小さいほどいいのです。冷却温度を保ちながら排熱との温度差を縮小するには排熱温度を下げればいいということです。そのためには、冷却水温度が下がらなければなりません。

 以上を踏まえて、改善提案No.2冷却水温度の適正化の内容に入ります。

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問題点
 ガス吸収式冷温水機の冷却水入口温度が35℃と高めになっています。

対策
 冷却塔周辺に通風処理を行ったり、設定温度を調整し年間平均で29~30℃程度になるようにします。

計算式
 削減エネルギー量=冷房エネルギー量×冷却水温度の適正化による削減率

効果試算
・試算条件;
  現状(冷却水温度35℃)ガス消費率;標準冷却水温度比113%(※1)
  適正化実施時(冷却水温度29℃)ガス消費率;標準冷却水温度比95%

 冷温水機負荷率;40%(※2)、冷房時COP;1.2、劣化率;65%

  夏期(7、8 月)・中間期(6、9、10 月)の操業時間;1760h/年
 都市ガス13A 低位発熱量;41.66×103kJ/㎥

  定格運転時ガス入力;523kW/台×2 台÷(冷房時COP1.2×0.65)=1,341kW
 ガス消費量1,342kW×40%×3600s/h×1,760h/年÷(41.66×103kJ/㎥)=81,582 ㎥/年

(※1 下表のデータを元に近似曲線より算出)





(※2 負荷率は冷温水機の冷水温度差、流量より冷熱量;4.2kJ/kgK×1,500kg/60s×2K=210kW のため)

・試算;
 ガス削減量;81,582 ㎥/年×(113-95)÷113=1,2995 ㎥/年
   低減コスト;1,2995 ㎥×76.5 円/㎥=994 千円/年
 原油換算;1,2995 ㎥/年×0.045GJ/㎥×0.0258kL/GJ=15.1kL/年
   CO2 削減量;1,2995 ㎥/年×0.0136t-C/GJ×44÷12t-CO2/t-C=29.2t-CO2/年
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 以上のような手順で効果試算を行います。次回、試算に出てきた負荷率、COP、劣化率、低位発熱量などとともに空気調和設備の診断で解説します。
  

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2018年01月31日

照明設備の診断

今回は、照明設備の診断による提案、改善提案No.1「照明の間引き」について解説します。
先ず、診断に際しては図1のような流れで行われます。




図1 照明設備診断の手順


 ここで、手順1、手順2までは前回までやってきたことです。そして、手順3で調査・分析を行った結果として、前回の提案「照明の間引き」ということです。

課題の抽出
 手順3には視点1-4としていくつかの提案が挙げてあります。今回の提案は視点2のエリア毎の照度管理に近い内容です。先ず、現状の課題の抽出を行いましょう。

事前情報の収集で得た事業場の空気環境測定結果(図2)や現地における診断(図3)により得た情報から分析します。




図2 空気環境測定結果





図3 現地における診断


 図2において照度に着目しました。それは、照明設備の運用に関する総則JIS Z 9110「照明基準規則」に基づく判断からです。では、照明基準規則とは何かというと、「主に人工照明によって、人々の諸活動が、安全、容易、かつ、快適に行えるための照明設計基準及び照明要件」ということです。省エネにおいてはこの要件を考慮しながら、無駄な照明を省き使用エネルギーの低減を図ります。
照明基準規則では照明の満足すべき要件(照明の質)を定めています。その要件を表1、表2に掲載します。

表1 基本的な照明要件(屋内作業)





表2 推奨照度とその範囲





 表から一般的な事務所では500lxで管理するのが妥当と言えます。これを踏まえると図2にある照度は平均的には750lx程あり、照度の高さが課題として挙げられます。

課題の解決
 ここまで、課題の抽出を行いました。では次に課題の解決を行います。
照度を下げるにはどうすればよいか。そこで、照度に関する重要な関係式が出てきます。
光束法という計算で次式のように表わされます。
E=Φ×n×U×M÷A

ここで
E;作業面の平均照度[lx]、A;部屋の床面積[㎡]、Φ;照明器具1台からの光束[lm]
n;その部屋の照明台数、U;照明率、M;保守率
この式で光束や照明率、保守率といった量が新たに出てきました。

 先ず、光束とは何かというと「光源などから放射されるエネルギーを、人の目の感度フィルタ(視感度)にかけてみた量」(JIS Z 9110)と説明されています。
 又、照度とは「光源によって照らされている場所の明るさの程度を表す測光量で、放射を受ける面の単位面積当たりに入射する光束」(同上)です。
 そして、照明率は「照明施設に入射する光束の、その取り付けられた個々のランプの全光束の総和に対する比」(同上)です。
 保守率は「照明施設をある一定期間使用した後の作業面上の平均照度の、その施設の新設時に同じ条件で測定した平均照度に対する比」(同上)です。

 分かりにくいかもしれませんが、光に関する量を特定の方法で数値にしたものということになるでしょうか。
ちなみに、照明率の計算は複雑ですが、通常は照明器具メーカーが自社の製造・販売器具について使用する部屋の条件を想定した簡易照明率表というのを用意しています。保守率も点灯時間、周囲環境、保守の状況による照明の減衰の特性が照明器具メーカーにより提示されているのでこれを用いることになります。

 事例の計算の前に、そもそもなぜ照度を下げる必要があるのかという基本的な問いに立ち返ってみましょう。それは省エネを達成するために消費エネルギーを低減するためであり、つまるところ照明台数を減らすことにほかならないということです。そこで、先程の式は変形すると、
n=E×A÷(Φ×U×M)

となります。
 では早速、事例の計算をします。現状の照明台数をn1、平均照度をE1、間引き後の照明台数をn2、平均照度をE2として、比をとるとnE以外はキャンセルされて
n2/n1=E2/E1

となり、式変形して
n2=(E2/E1n1

なので、現状の照明台数は図3からn1=350台/階、現状の平均照度はE1=750lx、そして間引き後は500lx程度に低減するということなのでE2=500lxです。これらを代入すると、
 n2=(500÷750)×350=233台/階
となります。従って、削減される照明台数は350-233=117台/階で5階まであるので全部で117×5=585台分の消費電力が削減されることになります。1台の消費電力が図3より72Wなので、72W/台×585台=42120W=42.120kW分が削減されます。電力量は電力に時間をかけた量です。年間点灯時間は事前情報から営業時間の9時から17時の8時間、営業日数は240日/年とあるので、8h/日×240日/年=1920h/年ですので、年間の電力量は
42.120kW×1920h/年=80870kWh/年となります。この電力量はエネルギーを表します。なのでWhはJと同じエネルギーの単位の一つです。従って単位を変換出来て、1Wh=3600Jです。これはW=J/sであり、1h=3600sなので1Wh=1W×1h=1J/s×3600s=3600Jとなります。1Wの電力を1時間かけると3600Jのエネルギーになるということです。

 さて、年間の削減電力量が得られたところでこれを原油量に換算します。ここで先ず、0.00997GJ/kWhという換算係数が出てきます。これは電気1kWhを生産するのに要する原油の発熱量です。昼間と夜間で違う値です。今回は昼間の値です。夜間の場合、0.009280GJ/kWhです。これらの数値は省エネ法第4条第3項 経済産業省令で定める使用した他人から供給された電気の量の原油の数量への換算に規定してあります。次に出てくる0.0258kL/GJという換算係数も同項に規定してあり、1GJの発熱量を得るのに原油0.0258kLを消費するということです。
 また、CO2削減量における係数として0.000505t-CO2/kWhというのが出てきます。これは実排出係数といい電力会社などの電気事業者により異なり、毎年度環境省・経済産業省から公表されます。排出係数には実排出係数と調整後排出係数があります。
 実排出量には実排出係数を使います。ここで紹介している提案では実排出削減量を算出しているので実排出係数を使います。今回使った値は平成27年11月30日公表のものです。

 もうひとつ、調整後排出係数というのがありこれはJ-クレジット制度等で削減したCO2を考慮して実排出量を調整した排出係数で調整後排出量を算定する際に使います。J-クレジット制度とは省エネルギー機器の導入や森林経営等の取り組みによるCO2等の温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認定する制度です。
  

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2017年10月31日

省エネ改善提案No.1 照明の間引き

今回は具体的に提案の事例を紹介します。
以下、改善提案No.1 照明の間引きについて取り上げます。
まず、結論としては表のようになります。



では、改善提案No.1 照明の間引きについて内容に入ります。

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問題点
 各階事務所の照度が平均750lxと高いです。

対策
 照明器具を間引いて平均照度を500lx程度に軽減します。

計算式
 削減電力量=定格電力×(フロアあたりの現状の照明台数-フロアあたりの間引き後の照明台数)×階数×年間点灯時間
 フロアあたりの間引き後の照明台数=フロアあたりの現状の照明台数×(対策後の照度÷現状照度)

効果試算
 ・試算条件
   事務所の現状照度;750lx
   定格電力;72W
   フロアあたりの現状の照明台数;350台/階
   階数;5階
   対策後の照度;500lx
   年間点灯時間;8h/日×240日/年=1,920h/年

 ・計算過程
   フロアあたりの間引き後の照明台数;350台/階×(500÷750)=233台/階
   削減電力量;72W×(350-233)台/階×5階×1,920h/年=80,870,000Wh/年=80,870kWh/年

 ・効果量
   削減電力量;80,870kWh/年
   原油換算;80,870kWh/年×0.00997GJ/kWh×0.0258kL/GJ=20.8kL/年
   低減コスト;80,870kWh/年×円/kWh=1,197千円/年
   CO2削減量;80,870kWh/年×0.000505t-CO2/kWh=40.8t-CO2/年

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以上のような試算の手順で効果を算出します。但し、これは一例なので必ずしもこのような形式が適当とは限りません。省エネ診断の考え方の参考として下さい。
次回、照明設備や今回の計算の根拠、原油換算での削減量やCO2削減量の計算で出てくる下線を付けた係数について解説します。  

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2017年09月30日

省エネ診断の事例2

今回は、省エネ診断の手順の現地における情報収集(図1)をもとにした診断結果を掲載します(図2)。


事例での診断結果を見ると、前回の情報の収集と分析より洗い出した設備と同様の調査であることが分かります。
これらをもとに、手順の診断報告書の作成(図3)を行います。

レポートは省略しますが、診断結果の入手情報をもとに課題を抽出し解決する提案を考えました。
以下、その一覧を掲載します(表1)。

表より全7件の提案のうち設備投資が必要な案件は2件しかなく、大半は使用条件・設定などの変更・調整で済むことが分かります。また、消費エネルギーの削減額もそうした提案だけで多くを占めていることが窺えます。

次回は提案の詳細について述べたいと思います。  

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2017年08月31日

省エネ診断の事例

今回は、実際に事例を用いて考えてみましょう。
まず、事例を掲載します。

これは、平成26年度エネルギー診断プロフェッショナル認定試験という資格試験の二次試験のレポート課題です。

まず、手順1の事前情報の収集を行います。

図1(出典)

一般的には表にあるような項目と内容を収集します。これにより現地診断をスムーズに進められます。

表1,2(出典)

事例では依頼元の事業所から以下の回答が得られました(図2)。

図2(出典 平成26年度エネルギー診断プロフェッショナル認定試験二次試験より抜粋)

事例(図2)では診断先の情報として、事業所の概要、エネルギーデータ、月別外気データ、エネルギー管理に関するアンケート調査結果、空気環境測定結果、熱源・空調設備仕様、給湯設備仕様、照明設備仕様を収集してあります。
この情報を元に分析を行います。

先ず、
 電気
 都市ガス
 夏期、冬期、中間期の代表的な1日の時間帯別平均使用電力
 夏期、冬期、中間期の代表的な1日の時間帯別都市ガス使用量
をグラフにしてみます。グラフ化にも工夫が大切です。先ず、月別の電気と都市ガス使用量をまとめて1つのグラフで表します(図3)。

図3

次に、時刻別の電気及び都市ガス使用量も1つのグラフにまとめます(図4)。

図4

このように電気とガスをまとめて比較することでエネルギー消費の多い設備の特定や後でで説明する特異点の分析の手がかりになります。

また、電気に関しては契約電力、最大電力、月別平均電力のグラフ化も有効です(図5)。

図5

最大電力に注目することは電力平準化を考える上で必要不可欠です。
ここまで、電気、都市ガスの各種エネルギー消費の推移をグラフ(図3-5)にしてきました。
ここでは、このエネルギー消費推移の特異点について考えてみましょう(図6)。

図6

特異点とはエネルギー使用のグラフにおいて特徴的なところであり、分析する上でポイントになります。
図のように例えばエネルギー種類別使用状況であれば、使用量が最大の月がエネルギー種別により異なるということを見ます。図の例では、空調に電気とガスを併用とのことですが、ガスの使用量は8月に最大となっています。一方、電気は9月に最大となっています。これだけでは確かなことは分かりませんが、例えば8月はガス焚冷温水機と電動機式の空調機などを併用したが9月は電動機式の空調機を中心に使用したといった状況が推定されます。省エネルギーという観点では通常、都市ガスより電気のほうが原油換算消費量やCO2発生量が多いと言えます。ですので、この特徴は一つの特異点といえるでしょう。

次に、年間電力使用状況であれば、例のように最大電力が9月とありますが、一般的に外気温の高い8月が最大となることから、例えば9月に複数の設備の使用が特定の時間に集中したといったことが推定されます。このような状況は電力平準化においてマイナス要因です。電力平準化とは「電気の需要量の季節又は時間帯による変動を縮小させること」をいい、平成26年4月1日施行の省エネ法の改正点として盛り込まれました。これは、東日本大震災での原発事故による電力需給の切迫が背景にあります。
電力平準化に際しては、設備使用時間帯をずらすピークシフトや支障がない程度に不要な照明や空調などを消すピークカットが有効です。
ですので、この最大電力というのは重要な着眼点と言えます。又、最大電力に対する平均電力の百分率を負荷率といい、値が大きいほど平準化しているということです。

次の時刻別電力使用量にも特徴があります。先ず、業務開始と電気使用量の上昇の時間帯、または業務終了と電気使用量の低下の時間帯は一致しているか、一致していなければ余分に電気を消費していないかといった視点で見ます。それともう一つは、一般的に昼休みに電気使用量が下がるという特徴があるので、そのような特徴が見られるかどうか、もし見られないか或いは小さい場合、消灯やOA機器のオフなどが不十分といったことが推定されます。

以上を踏まえて実際の事例のグラフ(図3-5)を見てみましょう。
以下では図3-5にコメントや矢印を付したものをそれぞれ図6-8とします。
先ず、月別エネルギー使用量(図6)からです。

図6

使用量の最大が都市ガスで8月、電気で9月となっています。また、5月は都市ガスの使用量がゼロですが、電気の使用量は都市ガスの使用がある他の月、特に10月とはほぼ変わりません。熱源・空調設備仕様を見ると熱源設備としてガス吸収式冷温水機があり、ポンプや冷却塔といった電気を使う機器で構成されています。つまり、都市ガス使用量がゼロの5月は冷温水機を稼働させなかったと考えられます。であれば、その分の電気使用量は稼働したと考えられる10月の電気使用量より少なくなるはずです。しかし、電気使用量は変わっていないということは熱源設備のうち都市ガスを使用する冷温水機自体は停止し、ポンプや冷却塔のファンは停止していなかったといったことが推定されます。もちろん、様々な要因があり得るので一概には言えませんが、こうした特徴から熱源設備は現地調査の一つの対象ということになります。

一方、月別電気使用量(図7)を見てみましょう。

図7

先ず、最大電力は9月の651kWであるのに対し年間平均電力は229kWであり、年間の負荷率、これを年負荷率といいますが35.2%となりました。そして、一般的に8月にピークとなるはずが9月に最大電力となっていることから先程の特異点の考察から電力平準化の余地があると考えられます。つまり、ピークシフト、ピークカットにより年負荷率の改善が期待できます。

次に、時刻別電気・都市ガス使用量(図8)について見てみましょう。

図8

①の始業前時間帯は、電気が各期とも上昇時間帯が同じなのに対し、都市ガスは上昇時間帯が夏期に冬期と比べ早いです。
②の操業時間帯は、電気使用量の特徴である昼休み時の低下が見られません。
これは消灯の不十分が考えられます。よって、照明設備は現地調査の対象と言えます。
③の残業時間帯は、電気・都市ガスともに緩やかな減少をたどっていて、これは一般的な特徴と言え問題ないでしょう。空調・照明区画の限定で更なる省エネルギー化が期待できます。
④の非使用時間帯は、電気・都市ガスともに、夏期に消費が見られます。夜間の不要な照明・換気・熱源等がないか確認が必要です。

最後に、エネルギー管理に関するアンケートを元にどういったことがあ不十分なのかを見てみましょう。アンケート結果を元に項目を数値化し、グラフにしました(図9)。

図9

計測・記録が他に比べ低く出ており、その重点項目として設備稼働時間を挙げてみますと、その対策として電気の切り忘れ防止があります。これは比較的容易にできます。
また、見直しが必要と思われる項目として、計画的人材育成が挙げられます。具体的にはエネルギー管理を専門的に行える担当者等の育成ということです。
それと、トップの意思表示や目標設定も必要になってきます。目標に関して従業員がしっかり認識を共有していることが大切です。

以上の事前情報の分析を元に着目すべき設備やその運用等を洗い出し、診断方法等の事前準備を行い、現地診断を実施することになります。
今回の分析を通じ、実際に確認が必要な設備として
 ガス吸収式冷温水機とその周辺機器で構成される熱源設備
 空調設備
 照明設備
が挙げられます。その使用環境や使用時間・期間の状況、また、エネルギー記録の担当者やその他の従業員等の省エネに関する意識が現地診断での着目すべき点として考えられます。

次回は、現地診断の結果の事例を紹介し、そこから課題を抽出し、解決するための提案事例を挙げてみます。
  

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2017年07月31日

省エネ診断について

今回は、省エネ診断について解説します。

省エネ診断とは、
 ・省エネビジネスを手掛ける民間企業
 ・一般財団法人省エネルギーセンターの中小企業対象の事業
における工場やオフィスの電気やガスなどのエネルギー消費量の無駄を削減する一連の業務のことです。

内容としては、
 ・企業、公的施設のエネルギー診断サービスや先進的エネルギー管理の導入などがあり、
 ・エネルギー供給、ESCO、プラント・エンジニアリング、電気機器・計測機器、建設・施工などのエネルギー関連企業が行うエネルギー・ソリューションビジネスとしての取り組みが挙げられます(図1)。




図1


具体的にはどのように進めるのか
基本的には、
 事前情報の収集 ⇒ 現地における情報収集 ⇒ 診断報告書の作成
という手順で進められます(図2)。




図2 (出典 省エネルギーセンター エネルギー診断プロフェッショナル認定試験公式テキスト より抜粋)


次回は、実際の事例をもとに省エネ診断をしてみます。  

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2016年11月30日

供給電力の発電効率と受電設備による総合熱効率の改善

今回は、日々の供給される電力を作るのにどれだけのエネルギーが消費されるか、そして、利用者側の設備によってその効率は、どう変わるのか考えてみます。  

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2016年10月31日

地球温暖化の環境影響とその対策について

今回は、地球温暖化による環境影響について列挙し、その対策として省エネルギー以外の考えられる方法を挙げてみます。
そして、それらの問題点から省エネルギーが最も現実的対策であることを考えてみたいと思います。  

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2016年09月30日

エネルギー情勢・政策について

今回は、省エネルギーの必要性について、エネルギー需給の観点から見ていこうと思います。
そこでまず、近年の世界のエネルギー情勢、次に日本のエネルギー情勢をざっと述べてみます。

・世界のエネルギー情勢
  石油危機(1973年)以降33年間の世界の一次エネルギー消費の推移・・・50%→36%

  しかし、依然として最大のエネルギー源

・日本のエネルギー情勢
石油危機以降34年間の我が国のエネルギー消費に占める石油依存度・・・77%→48%

  しかし、我が国の石油を含む各種エネルギー全体の消費に占める輸入依存度は82%

   ⇒他の先進国と比べエネルギー供給体質は脆弱  

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2016年06月28日

エクセルギーについて

前回のエネルギーの種類と変換に関連して、エクセルギー(有効エネルギー)という概念を紹介します。  

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2016年05月31日

エネルギーの概念および種類について

今回は、エネルギーとは何か、その種類と各種エネルギーの変換における性質などを述べたいと思います。  

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2016年04月30日

省エネ法について

これまで、原油換算量やCO2、原単位など省エネ法に絡む内容について紹介してきましたが、今回改めて省エネ法についてみていきたいと思います。
まず、省エネ法とは、正式には「エネルギー使用の合理化に関する法律」といいます。
  

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2016年03月28日

省エネ技術解説5;原単位について

今回は、原単位について解説します。  

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2016年02月28日

省エネ技術解説4;エネルギー起源CO2排出量の算定について

事業活動の環境負荷や省エネ改善の評価として一般的に用いられるのがCO2排出量あるいはそれに関連した量です。
今回は、そのエネルギー起源CO2(二酸化炭素)の算定方法について解説します。
エネルギー起源CO2とは、エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法、以下同じ)で規定するエネルギーの消費において発生したCO2のことです。
では、省エネ法で規定するエネルギーとは何かということですが、法律 第1章 総則 第2条 定義より抜粋すると
燃料並びに熱(燃料を熱源とする熱に代えて使用される熱であって政令で定めるものを除く。以下同じ。)及び電気(燃料を熱源とする熱を変換して得られる動力を変換して得られる電気に代えて使用される電気であって政令で定めるものを除く。以下同じ。)をいう。
とあります。
更に、細かな規定で、
法律施行令 第1条第1項 政令で定める熱:
燃料を熱源とする熱に代えて使用される熱のみを発生させる設備から発生する熱で
 一 当該熱を発生させた者が自ら使用するものであること。
 二 当該熱のみを供給する者から当該熱の供給を受けた者が使用するものであること。
のいずれかに該当するものであること。

とあります。
つまり、一は具体的に言うと燃料を燃焼させて自社の生産工程で製品を製造する際の加熱に使った場合や自社ビルの暖房に使った場合などがこれに該当します。
法律施行令 第1条第2項 政令で定める電気:
 一  

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2016年01月28日

省エネ技術解説3;省エネ法における原油換算量について

今回は、省エネ法に規定されている原油換算量とその算定方法について解説します。
省エネ法ではエネルギー消費量を原油換算し、その量に応じて事業者は特定事業者、指定事業者、指定なしに分けられます。
具体的には  

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2015年07月22日

アルミ缶冷却器の製作

今回は、空き缶を使った冷却器について説明します。
本体の構造はいたって簡単で、小穴を開けてそこを紙とセロハンテープで塞いだアルミ缶を割り箸を挟んで積んだつくりになっています。

本体

部分拡大図

穴を紙で塞いだ部分の様子、使用によりテープが徐々にふやけてくるので製作の段階でしっかりアルミ缶の表面に密着させます。  

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2015年02月22日

省エネ技術解説2;熱回収

今回は熱回収について、プロセス内でのヒートポンプの設置位置の決め方などを説明します。  

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