2018年01月31日
照明設備の診断
今回は、照明設備の診断による提案、改善提案No.1「照明の間引き」について解説します。
先ず、診断に際しては図1のような流れで行われます。
ここで、手順1、手順2までは前回までやってきたことです。そして、手順3で調査・分析を行った結果として、前回の提案「照明の間引き」ということです。
課題の抽出
手順3には視点1-4としていくつかの提案が挙げてあります。今回の提案は視点2のエリア毎の照度管理に近い内容です。先ず、現状の課題の抽出を行いましょう。
事前情報の収集で得た事業場の空気環境測定結果(図2)や現地における診断(図3)により得た情報から分析します。
図2において照度に着目しました。それは、照明設備の運用に関する総則JIS Z 9110「照明基準規則」に基づく判断からです。では、照明基準規則とは何かというと、「主に人工照明によって、人々の諸活動が、安全、容易、かつ、快適に行えるための照明設計基準及び照明要件」ということです。省エネにおいてはこの要件を考慮しながら、無駄な照明を省き使用エネルギーの低減を図ります。
照明基準規則では照明の満足すべき要件(照明の質)を定めています。その要件を表1、表2に掲載します。
表から一般的な事務所では500lxで管理するのが妥当と言えます。これを踏まえると図2にある照度は平均的には750lx程あり、照度の高さが課題として挙げられます。
課題の解決
ここまで、課題の抽出を行いました。では次に課題の解決を行います。
照度を下げるにはどうすればよいか。そこで、照度に関する重要な関係式が出てきます。
光束法という計算で次式のように表わされます。
ここで
E;作業面の平均照度[lx]、A;部屋の床面積[㎡]、Φ;照明器具1台からの光束[lm]
n;その部屋の照明台数、U;照明率、M;保守率
この式で光束や照明率、保守率といった量が新たに出てきました。
先ず、光束とは何かというと「光源などから放射されるエネルギーを、人の目の感度フィルタ(視感度)にかけてみた量」(JIS Z 9110)と説明されています。
又、照度とは「光源によって照らされている場所の明るさの程度を表す測光量で、放射を受ける面の単位面積当たりに入射する光束」(同上)です。
そして、照明率は「照明施設に入射する光束の、その取り付けられた個々のランプの全光束の総和に対する比」(同上)です。
保守率は「照明施設をある一定期間使用した後の作業面上の平均照度の、その施設の新設時に同じ条件で測定した平均照度に対する比」(同上)です。
分かりにくいかもしれませんが、光に関する量を特定の方法で数値にしたものということになるでしょうか。
ちなみに、照明率の計算は複雑ですが、通常は照明器具メーカーが自社の製造・販売器具について使用する部屋の条件を想定した簡易照明率表というのを用意しています。保守率も点灯時間、周囲環境、保守の状況による照明の減衰の特性が照明器具メーカーにより提示されているのでこれを用いることになります。
事例の計算の前に、そもそもなぜ照度を下げる必要があるのかという基本的な問いに立ち返ってみましょう。それは省エネを達成するために消費エネルギーを低減するためであり、つまるところ照明台数を減らすことにほかならないということです。そこで、先程の式は変形すると、
となります。
では早速、事例の計算をします。現状の照明台数をn1、平均照度をE1、間引き後の照明台数をn2、平均照度をE2として、比をとるとn、E以外はキャンセルされて
となり、式変形して
なので、現状の照明台数は図3からn1=350台/階、現状の平均照度はE1=750lx、そして間引き後は500lx程度に低減するということなのでE2=500lxです。これらを代入すると、
n2=(500÷750)×350=233台/階
となります。従って、削減される照明台数は350-233=117台/階で5階まであるので全部で117×5=585台分の消費電力が削減されることになります。1台の消費電力が図3より72Wなので、72W/台×585台=42120W=42.120kW分が削減されます。電力量は電力に時間をかけた量です。年間点灯時間は事前情報から営業時間の9時から17時の8時間、営業日数は240日/年とあるので、8h/日×240日/年=1920h/年ですので、年間の電力量は
42.120kW×1920h/年=80870kWh/年となります。この電力量はエネルギーを表します。なのでWhはJと同じエネルギーの単位の一つです。従って単位を変換出来て、1Wh=3600Jです。これはW=J/sであり、1h=3600sなので1Wh=1W×1h=1J/s×3600s=3600Jとなります。1Wの電力を1時間かけると3600Jのエネルギーになるということです。
さて、年間の削減電力量が得られたところでこれを原油量に換算します。ここで先ず、0.00997GJ/kWhという換算係数が出てきます。これは電気1kWhを生産するのに要する原油の発熱量です。昼間と夜間で違う値です。今回は昼間の値です。夜間の場合、0.009280GJ/kWhです。これらの数値は省エネ法第4条第3項 経済産業省令で定める使用した他人から供給された電気の量の原油の数量への換算に規定してあります。次に出てくる0.0258kL/GJという換算係数も同項に規定してあり、1GJの発熱量を得るのに原油0.0258kLを消費するということです。
また、CO2削減量における係数として0.000505t-CO2/kWhというのが出てきます。これは実排出係数といい電力会社などの電気事業者により異なり、毎年度環境省・経済産業省から公表されます。排出係数には実排出係数と調整後排出係数があります。
実排出量には実排出係数を使います。ここで紹介している提案では実排出削減量を算出しているので実排出係数を使います。今回使った値は平成27年11月30日公表のものです。
もうひとつ、調整後排出係数というのがありこれはJ-クレジット制度等で削減したCO2を考慮して実排出量を調整した排出係数で調整後排出量を算定する際に使います。J-クレジット制度とは省エネルギー機器の導入や森林経営等の取り組みによるCO2等の温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認定する制度です。
先ず、診断に際しては図1のような流れで行われます。
図1 照明設備診断の手順
ここで、手順1、手順2までは前回までやってきたことです。そして、手順3で調査・分析を行った結果として、前回の提案「照明の間引き」ということです。
課題の抽出
手順3には視点1-4としていくつかの提案が挙げてあります。今回の提案は視点2のエリア毎の照度管理に近い内容です。先ず、現状の課題の抽出を行いましょう。
事前情報の収集で得た事業場の空気環境測定結果(図2)や現地における診断(図3)により得た情報から分析します。
図2 空気環境測定結果
図3 現地における診断
図2において照度に着目しました。それは、照明設備の運用に関する総則JIS Z 9110「照明基準規則」に基づく判断からです。では、照明基準規則とは何かというと、「主に人工照明によって、人々の諸活動が、安全、容易、かつ、快適に行えるための照明設計基準及び照明要件」ということです。省エネにおいてはこの要件を考慮しながら、無駄な照明を省き使用エネルギーの低減を図ります。
照明基準規則では照明の満足すべき要件(照明の質)を定めています。その要件を表1、表2に掲載します。
表1 基本的な照明要件(屋内作業)
表2 推奨照度とその範囲
表から一般的な事務所では500lxで管理するのが妥当と言えます。これを踏まえると図2にある照度は平均的には750lx程あり、照度の高さが課題として挙げられます。
課題の解決
ここまで、課題の抽出を行いました。では次に課題の解決を行います。
照度を下げるにはどうすればよいか。そこで、照度に関する重要な関係式が出てきます。
光束法という計算で次式のように表わされます。
E=Φ×n×U×M÷A
ここで
E;作業面の平均照度[lx]、A;部屋の床面積[㎡]、Φ;照明器具1台からの光束[lm]
n;その部屋の照明台数、U;照明率、M;保守率
この式で光束や照明率、保守率といった量が新たに出てきました。
先ず、光束とは何かというと「光源などから放射されるエネルギーを、人の目の感度フィルタ(視感度)にかけてみた量」(JIS Z 9110)と説明されています。
又、照度とは「光源によって照らされている場所の明るさの程度を表す測光量で、放射を受ける面の単位面積当たりに入射する光束」(同上)です。
そして、照明率は「照明施設に入射する光束の、その取り付けられた個々のランプの全光束の総和に対する比」(同上)です。
保守率は「照明施設をある一定期間使用した後の作業面上の平均照度の、その施設の新設時に同じ条件で測定した平均照度に対する比」(同上)です。
分かりにくいかもしれませんが、光に関する量を特定の方法で数値にしたものということになるでしょうか。
ちなみに、照明率の計算は複雑ですが、通常は照明器具メーカーが自社の製造・販売器具について使用する部屋の条件を想定した簡易照明率表というのを用意しています。保守率も点灯時間、周囲環境、保守の状況による照明の減衰の特性が照明器具メーカーにより提示されているのでこれを用いることになります。
事例の計算の前に、そもそもなぜ照度を下げる必要があるのかという基本的な問いに立ち返ってみましょう。それは省エネを達成するために消費エネルギーを低減するためであり、つまるところ照明台数を減らすことにほかならないということです。そこで、先程の式は変形すると、
n=E×A÷(Φ×U×M)
となります。
では早速、事例の計算をします。現状の照明台数をn1、平均照度をE1、間引き後の照明台数をn2、平均照度をE2として、比をとるとn、E以外はキャンセルされて
n2/n1=E2/E1
となり、式変形して
n2=(E2/E1)×n1
なので、現状の照明台数は図3からn1=350台/階、現状の平均照度はE1=750lx、そして間引き後は500lx程度に低減するということなのでE2=500lxです。これらを代入すると、
n2=(500÷750)×350=233台/階
となります。従って、削減される照明台数は350-233=117台/階で5階まであるので全部で117×5=585台分の消費電力が削減されることになります。1台の消費電力が図3より72Wなので、72W/台×585台=42120W=42.120kW分が削減されます。電力量は電力に時間をかけた量です。年間点灯時間は事前情報から営業時間の9時から17時の8時間、営業日数は240日/年とあるので、8h/日×240日/年=1920h/年ですので、年間の電力量は
42.120kW×1920h/年=80870kWh/年となります。この電力量はエネルギーを表します。なのでWhはJと同じエネルギーの単位の一つです。従って単位を変換出来て、1Wh=3600Jです。これはW=J/sであり、1h=3600sなので1Wh=1W×1h=1J/s×3600s=3600Jとなります。1Wの電力を1時間かけると3600Jのエネルギーになるということです。
さて、年間の削減電力量が得られたところでこれを原油量に換算します。ここで先ず、0.00997GJ/kWhという換算係数が出てきます。これは電気1kWhを生産するのに要する原油の発熱量です。昼間と夜間で違う値です。今回は昼間の値です。夜間の場合、0.009280GJ/kWhです。これらの数値は省エネ法第4条第3項 経済産業省令で定める使用した他人から供給された電気の量の原油の数量への換算に規定してあります。次に出てくる0.0258kL/GJという換算係数も同項に規定してあり、1GJの発熱量を得るのに原油0.0258kLを消費するということです。
また、CO2削減量における係数として0.000505t-CO2/kWhというのが出てきます。これは実排出係数といい電力会社などの電気事業者により異なり、毎年度環境省・経済産業省から公表されます。排出係数には実排出係数と調整後排出係数があります。
実排出量には実排出係数を使います。ここで紹介している提案では実排出削減量を算出しているので実排出係数を使います。今回使った値は平成27年11月30日公表のものです。
もうひとつ、調整後排出係数というのがありこれはJ-クレジット制度等で削減したCO2を考慮して実排出量を調整した排出係数で調整後排出量を算定する際に使います。J-クレジット制度とは省エネルギー機器の導入や森林経営等の取り組みによるCO2等の温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認定する制度です。